仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
「可愛く身悶えてる君を見るのは、本当にたまらないよ。癖になりそう」

「そんなの癖にならないで下さい! こっちはどんな気持ちで……」

「どんな気持ちで?」

「そ、それは」

自分でもわからないのに、この人は本当に意地悪だ。
こんなことをされたら逆にドキドキしてしまって、慧さんを意識してしまう。

それって、もしかして……私が期待していたってこと!?

頭の中がぐちゃぐちゃにこんがらがって、自分で自分がわからない。
慧さんはクスクスと笑いながら抱きしめた。

「君のことなら、少しくらい待つのも嫌じゃない」

彼は私を布団の中に引き寄せると、私の首筋に再び顔を埋めた。

慧さんの仕草に胸がきゅうっと締め付けられる。

「今日から一緒のベッドで寝る。それも君への特別授業のひとつだから、従ってくれるよね?」

そう言われてしまえば従う他なかった。だって、私は慧さんの“婚約者”なのだ。

「……もちろん、です」

「うん。おやすみ、結衣」

満足そうに口元を緩めた彼は、再び私の頬にちゅっとキスを落とした。

柔らかな唇の感触に、じんわりと胸が温かくなる。
安心感のある腕の中は何故だか幸福感に満ちていた。

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