仮初めマリッジ～イジワル社長が逃してくれません～

「なんで裸なんですか！」

「そんなに驚くこと？　ナイトウェアを着るのは窮屈だからね」

彼は起き上がるとベッドを出る。思わず両掌で顔を覆った。

「ひゃあ」

「ジッと見つめていたのはどこの誰かな？　それに下は穿いてるよ」

大きな窓にかかるカーテンを開くと、早朝の陽の光が一気に部屋へ差し込んだ。

チラリと指の隙間から窺えば、彼はボクサーパンツを穿いただけの姿で、床に落ちていた脱ぎっぱなしのバスローブを拾い上げていた。

広い逆三角形の背中には、程よく美しい筋肉がついている。

慧さんのあまりにもセクシーな姿に「きゃあ！」と悲鳴を上げて私はまた顔を覆う。

何か服を着てくれるのかと思いきや、彼は裸のままでシーツの海に戻ってくる。

「もう少し結衣を抱きしめて寝てもいいかな」

「まずは服を着てください！　いつ目を開けたらいいんですか！」

そう抗議をしながら、顔を覆っていた左手に違和感を覚えて、私は手を頭上に翳した。