副社長へのチョコはオフィスを出てから
二人っきりの副社長室で
定時を少し過ぎた頃、会議から戻って来た副社長が、副社長室の扉を閉めると中から鍵をかけた。
「で、この後の予定は?」
切れ長で意思の強い目を、真っ直ぐに私に向け、ゆっくりと近づいてくる。
「本日のスケジュールは、先程の会議で終了です。」
朝も確認したスケジュールを告げると、
「スケジュールはわかっている。亜紀の予定は?」
その視線を外すことなく、私に問いかける。
副社長に苗字でなく名前を呼ばれたのは、今日が初めてだ。
坂本コーポレーション次期社長で、4月から副社長に就任した坂本彰。
クールなイケメンで、仕事においては切れ者。
近寄りがたい雰囲気はあるが、さりげない気配りが出来るモテ男だ。
バレンタインデーの今日、義理チョコと呼ぶには豪華すぎるチョコを鞄にしのばせてきたのだが、副社長に渡すのは無理だと諦めていた。
秘書室の後輩、山下さんが午前中に副社長室を訪ねチョコを渡そうとしたら、
「オフィスは仕事をする場所だから…」
素っ気なく言って、チョコも受け取らなかったのを見てしまった。
副社長はいつも、定時を過ぎても遅くまで仕事をしているようで、退社後にオフィスを出てから渡すというのは、まず無理だし、そこまであからさまにする勇気もなく諦めたのだ。
何故呼び捨て?私の予定ってどういうこと?
疑問に思いながらも、
「家に帰りますが。」
と、副社長の目を見て答える。
「今日が何の日か知ってる?亜紀からのチョコは貰えないのかな?」
そう言って、更に身体を近づけ、私の腰に腕を回した。
近すぎる距離に鼓動が跳ねる。
副社長から視線を外しうつむいた。
「オフィスは仕事をする場所だからって副社長が…」
そう言って口ごもると、
「食事でもどうかな?そのために今日は定時で終わらせた。オフィスを出れば、亜紀からのチョコが貰えるのかな?」
耳元で囁くように問いかけられ、柑橘系の爽やかな香りがふわりと香る。
少し身体が離れて、副社長のすらりとした指が私の顎を捕らえ、上を向けられた。
再び視線が絡まる。
妖しく色気をまとった瞳が、真っ直ぐに私を見つめる。
「亜紀。返事は?」
「はい。」
「オフィスを出ても、義理チョコは受け取らないよ。」
吐息を感じる距離で、確認をするように言葉がかけられる。
「本命です。」
「いい子だ。」
そう言って、唇が重なった。
「で、この後の予定は?」
切れ長で意思の強い目を、真っ直ぐに私に向け、ゆっくりと近づいてくる。
「本日のスケジュールは、先程の会議で終了です。」
朝も確認したスケジュールを告げると、
「スケジュールはわかっている。亜紀の予定は?」
その視線を外すことなく、私に問いかける。
副社長に苗字でなく名前を呼ばれたのは、今日が初めてだ。
坂本コーポレーション次期社長で、4月から副社長に就任した坂本彰。
クールなイケメンで、仕事においては切れ者。
近寄りがたい雰囲気はあるが、さりげない気配りが出来るモテ男だ。
バレンタインデーの今日、義理チョコと呼ぶには豪華すぎるチョコを鞄にしのばせてきたのだが、副社長に渡すのは無理だと諦めていた。
秘書室の後輩、山下さんが午前中に副社長室を訪ねチョコを渡そうとしたら、
「オフィスは仕事をする場所だから…」
素っ気なく言って、チョコも受け取らなかったのを見てしまった。
副社長はいつも、定時を過ぎても遅くまで仕事をしているようで、退社後にオフィスを出てから渡すというのは、まず無理だし、そこまであからさまにする勇気もなく諦めたのだ。
何故呼び捨て?私の予定ってどういうこと?
疑問に思いながらも、
「家に帰りますが。」
と、副社長の目を見て答える。
「今日が何の日か知ってる?亜紀からのチョコは貰えないのかな?」
そう言って、更に身体を近づけ、私の腰に腕を回した。
近すぎる距離に鼓動が跳ねる。
副社長から視線を外しうつむいた。
「オフィスは仕事をする場所だからって副社長が…」
そう言って口ごもると、
「食事でもどうかな?そのために今日は定時で終わらせた。オフィスを出れば、亜紀からのチョコが貰えるのかな?」
耳元で囁くように問いかけられ、柑橘系の爽やかな香りがふわりと香る。
少し身体が離れて、副社長のすらりとした指が私の顎を捕らえ、上を向けられた。
再び視線が絡まる。
妖しく色気をまとった瞳が、真っ直ぐに私を見つめる。
「亜紀。返事は?」
「はい。」
「オフィスを出ても、義理チョコは受け取らないよ。」
吐息を感じる距離で、確認をするように言葉がかけられる。
「本命です。」
「いい子だ。」
そう言って、唇が重なった。