愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
「また恥ずかしながら、私の会社は旧体制的な風紀がありまして。早く身を固めた方が出世しやすいと言う上司も少なくないのです。それもあり、私自身そろそろ結婚相手を探さなければと考えておりました」
「ええ、はあ。そうなんですね」

まったく気の利いた返しができなくなっている。だって、まさかの急転直下展開なんだもん。
女児向けアニメなら一話目でラスボスの過去の回想やっちゃった感じよ!?主人公変身前ですけど!!

「収入面での苦労はさせないと思います。来春には室長の内示をもらっていますし、浪費になる趣味は持ち合わせておりません。あなたがお仕事を続けても、専業主婦になっても、金銭的にはどちらでも対応可能です。ひとり暮らしが長いので、家事の分担もできます。子どもはいたらいいとは思いますが、あなたのお仕事やお考えもあるでしょう。判断はお任せします」

まるで業務連絡みたいだ。効率重視の結婚生活という職務のため、プレゼンテーションされてるんだ、私。

「あなたの趣味やあなたの友人関係に立ち入るつもりもありません。息苦しくない家庭になるよう努力します」

そこまで言ってから、目の前の男性・榊高晴が私の方を向き直った。

背の高い彼を見上げ、私は呆気に取られている。
しかしこのとき、彼が初めて表情を変えたのだ。
頬がかすかに赤い。私を見つめる瞳が揺れている。

「もちろん……雫さんさえ、……よければの話なのですが」

語尾が消え入りそう。赤い頬をすっと一筋汗がつたうのが見えた。

< 10 / 172 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop