愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
「ひとり暮らしの休日は、近所や都内を散歩していたな。ランニングとかじゃなくて、普通に景色を眺めて。……じいさん臭いって思った?」

じとっとこちらを眺めてくる彼が珍しくて、そして少し可愛らしくて私はぶふっと吹き出した。

「思ってないよ。散歩なら私も付き合えるじゃない」
「歩き回って、帰って筋トレして、だいたい週末が終わるんだ」
「筋トレはやだ。でも今度お散歩しましょ。私がインドア派だから、お散歩とかで連れ出してもらえると助かるなあ。って、この旅行も規模の大きな散歩って感じじゃない?」
「確かにね」

なんだ、私たちってこんな風に近づくことができたんだ。
オタク趣味を馬鹿にされたら嫌だ。引かれたら嫌だ。そう思ってハリネズミみたいにトゲを立ててきたけれど、こうして素直に話せば理解してくれる人だっている。
旦那さんがそんな人でよかった。

ディープな部分まで全部理解してくれなくてもいい。歩み寄ってくれる人って素敵だ。

「高晴さん、ありがとう。高晴さんが旦那さんでよかった」

私が言うと高晴さんはあからさまに頰を赤くしてよそを向いてしまう。照れてるのかな。いいや、言っちゃおう。

「お見合いだし、利害が一致したから結婚したような感じだけど、私は高晴さんを大事な旦那さんだと思ってます。もっと仲良くなりたい」

浴衣の首筋まで赤くなってる高晴さん。
お酒のせいじゃない。だって私もきっと赤くなってるもん。
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