愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
「雫さん、よければキスしてみませんか」

不意に言われて、心臓がどかんとひとつ鳴り響いた。どうしようと焦りながらも私は頷いていた。拒否なんてしたくない。
高晴さんが右手を畳につく。顔が傾く。私も右側に顔を傾け、唇同士が触れ合った。結婚式のときは感触も覚えてないけれど、今回はちゃんとわかる。柔らかくて、気持ちがいい。お互いの体温が近くにある。高晴さんの黒い髪がを私の頰にあたる。
わずかに触れ合っただけで、私たちは唇を離した。

「へへ」
「なに?」
「今だから言うけど、結婚式の誓いのキス、あれが私のファーストキスだったの。これで二度目だなぁって思っただけ」

間近にある高晴さんの瞳がちょっとだけ大きくなる。驚いたかな。

すると、高晴さんが私の頰に左手をぺたっと押し当てた。なんだろうと思う間に、再び唇が重なった。彼にしては強引で急なことに、私は真っ赤になって言葉が出ない。

「これで、三度目」

その言葉は高晴さんの腕の中で聞いた。抱き寄せられたのは初めてで、結婚して2ヶ月以上経つのに変な話だなと思った。

アニメや漫画の中でキスシーンがあるとわくわくする。
なかなかくっつかないふたりなら、「早くキスくらいしちゃいなさいよ!」って思う。
でも、本物のキス、好きな人とのキスは、簡単に済ませてしまうにはもったいないんだ。特別で大事な瞬間なんだ。

ああ、私やっと気付いた。

私、高晴さんのこと好きになってる。
抱き合って胸が苦しいくらいドキドキするのも、もっとこの人のことが知りたいって思うのも、4度目のキスもしたいって思うのも、全部全部恋なんだ。
あったかい気持ちなんだなぁ、恋って。
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