愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
この人、喋るの苦手なんだろうな。過去二回の反省を込め、今日はきっとこのプレゼンを練習してきたに違いない。

「条件として、私は高晴さんの希望に合いますか?」

気づいたら聞き返していた。こちらこそ業務連絡みたいになってしまう。

「一緒に暮らす妻として……私でいいですか?」
「雫さんがいいです」

高晴さんは赤い頬ではっきりと言いきった。その顔を見たら、私もぽぽぽっと頬が熱くなってきた。

うわわわ。えーと私、今この瞬間、成人男性を可愛いと思ってしまいました。
二次元じゃない、リアルな男性を可愛いと思ったのは初めてだわ。

「それじゃ、結婚しましょう」

その言葉は勢いだったけれど、私の気持ちは勢いだけじゃなかった。間違いなく、私は目の前の男性に生まれて初めて心を揺さぶられた。
私、たぶんこの人を嫌いじゃない。それどころか、家族になってもいいかもと思っている。出会って数時間の人だけど、直感的に『アリ』だと感じている。

この人は私を恋愛で見ていない。奥さんという役をやってくれる人だと思っている。
私も結婚に夢や理想があるほうじゃないんだし、そのくらいでちょうどいい。

というか打算的に見ても、私の人生において最初で最後の超優良物件じゃない?
顔よし、収入よし。仕事も家庭観も好きにしてよし、趣味にも口を挟まない。

これは、私の人生にきた婚期ビッグウェーブ。
人生保証に王手じゃない!?

「高晴さん、よろしくお願いします」
「雫さん、こちらこそよろしくお願いします」

私たちはまるで商談成立といった雰囲気で握手し、頭を下げたのだった。



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