愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
こうして、並んで視聴する時間は夫婦らしくて嬉しいし、実際アニメもなかなか面白い。

しかしだ!

こうなると2時間ほどアニメに時間を取られ、見終わると「じゃあ、寝よっか」という流れになってしまうのだ!

ふたりでイチャイチャする時間がない!!
まっっったくない!!

「はぁ、オープニング、マジ神。曲もいいよね。盛り上がるよね。このさぁ、メイスで敵機体の装甲を叩き潰す瞬間、めちゃくちゃカッコいい。あと、主人公ふたりが視線交わすのが尊すぎる」

うっとりと見つめる雫を抱き寄せ、ソファに押し倒し、キスすることが俺にできるか?

で・き・る・わ・け・な・い!

そんなことしたら、ただの妨害行為だ。雫は俺になびくどころか、鬱陶しく思うだろう。もう一緒にこんな時間を過ごしてくれなくなる。

仕方なく俺は、邪念を殺すため画面に集中する。

「あの参謀役の少年、妹のことを心配したりして、近々死んでしまいそうで怖いな」
「高晴さん!鋭い!そうなの、死亡フラグめっちゃ立ってるでしょ!もうつらい!あーでも、これ以上言えない!見よ、ね!見よ!最後まで見ればわかるから!!」

エキサイトする雫の横でおとなしく視聴する俺。展開は面白い。それは認める。
そして雫の中で、今の俺のポジションは同居人から格上げにはなった。しかし、現状『アニメ友達』くらいで終わってないか?
楽しく語り合いながらアニメを見る素敵な仲間になっていないか?
それは……本意ではない……。

情けないけれどせめてもの主張で、俺は隣に座る雫の手をとり、ぎゅっと握った。


< 113 / 172 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop