愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
日曜日、やることのない俺は遅番の雫を送り出してから、部屋に掃除機をかけた。
ゆっくりと本を読んだり、映画でも見に行こうかと考えたが、どれも集中できなさそうでやめた。

雫がほかの男と食事に行く。
そのことが重石になって心にのしかかっている。

俺も同僚の日向や、仕事相手の女医なんかとランチをすることはある。しかし、それは同僚の付き合いだし、仕事の範囲だ。
雫の職場は女性が多いが、彼女が男性の同僚と昼食を食べるくらいなら、俺も気にはしない。そこまで目くじらをたてていたら、仕事妨害だ。

しかし、今回は話が違う。

相手はビジネスランチの後にわざわざ雫を誘っている。
彼女の左手の薬指を見なかったはずはない。雫が既婚者だと気付きながら、ディナーに誘っているのだ。そんな男は、どれほど才能があろうが、雫の会社に必要な存在だろうが、ろくなやつじゃない。

それほど嫌なら「やめろ」と言えばよかったのだろう。
しかし、仕事が多少なりとも関わっていて、雫本人が本意でなくとも行った方がいいと考えていて、そこで俺がどうして止められるだろう。
止めてはだめだ。俺の理由は単純にも「嫁さんがよその男と夜に出かけるのが嫌」ということだけなのだから。
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