愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~






私が実家を出たのは挙式の翌日だった。有休をとった月曜日、実家から単身パックで荷物を高晴さんのマンションに送った。トラックを見送り、実家で昼食を食べたら出ることになっている。父は仕事だし、送り出す母は「またねぇ」と呑気なもので、とても嫁入りの空気じゃない。
昨日の結婚式も母は義母になった晶子さんとずーっと喋っていて、涙涙の娘の挙式といった雰囲気じゃなかった。

「姉ちゃん、ホント大丈夫?」

唯一心配げなのは弟の祐樹だった。福岡から結婚式に駆けつけてくれた祐樹は今夜の飛行機で戻ることになっている。私の荷造りを手伝ってくれたのも祐樹だ。

「大丈夫ってなによ」
「ファミレスでメニュー決める感覚で結婚したこと」
「あのねぇ、結婚式は昨日終わりましたけど!?」

私は弟のお土産、福岡で有名なめんたいこの煎餅をバリバリかじりながら言い返した。
祐樹は私より数段賢く、数倍生きるのが上手だ。モテるし、ちょっとひいき目に見てもなかなかのイケメン。そんな姉より人生経験知の高い弟が、姉の引越し間際に苦言を呈してきましてけど?

「私なりに考えました。旦那さんだもん。一緒に住むんだもん。収入面でも将来性でも安定感高い。それにイケメン!子どもができたとして優秀な遺伝子を期待できる」
「そゆとこそゆとこ」

祐樹が額を押さえてため息をつく。
ちなみにこのやりとりは、引っ越しトラックが去った市川家のダイニングで行われております。
母は、私たち用のインスタントラーメンをゆでてる。実家最後の食事がインスタントラーメン……我が母ながら雑だわ。

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