愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
「だって、やっぱり既婚者が男性と夜にふたりきりで食事って避けた方がいい絵面だよね。どこで誰が見てるかもわかんないし。それにビジネス外なら断ったって本来は問題ないんだよなぁって思い直したの」

そこまで言ってから、雫はへらっと笑った。

「というのは建前で、高晴さん以外の男の人とごはん食べても楽しくなさそうだから、行きたくなかったんだよー。どんな美味しい三ツ星フレンチフルコースでも、予約のとれない人気店のステーキでも、よく知らない人と食べたら味なんかわかんないよ~」

言葉が出なくなってしまった俺に歩み寄って、雫は俺の両手をとった。

見上げる瞳は心なしか潤んでいる。
夜の街の灯りを反射しているだけなのだろうけれど、今まで見たことない表情だ。
嬉しいような照れくさいようなその全部のような。

「高晴さん、嫌だって言ってくれてありがとう」
「雫さん……嫉妬深くてごめん」
「ううん、そんな風に言われて私はめちゃくちゃ嬉しい。引き止めてくれて、それでも信頼してるって言ってくれて、すごく嬉しいよ」

俺は雫の小さな手を握り返す。
このまま引き寄せてキスをしてしまいたい。でも、こんな街中で……躊躇していると俺たちの真横から声が聞こえてきた。

「えーと、お取込み中、失礼します」
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