愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
「徳島先輩、色々とありがとうございます」

雫が俺の横でぺこっと頭を下げ返した。

「ごめんね、巻き込んじゃって。あのデザイナー、中性的に見えたけれど、結構女遊びが激しいんだって。調べたわよ、もう。そんな男と可愛い後輩を食事になんて送りだせません。あなたに不利益は起こらないから大丈夫よ」
「先輩、頼もしいなぁ」

雫がへらへら笑う。すると、徳島さんが雫の耳にぼそぼそと耳打ち。
なんだろう、女性の内緒話って遠慮なくいつでも発動するよな。居心地が悪いぞ。

雫と徳島さんが顔を見合わせ、にこっと笑うので、余計居たたまれない。
変な話をされているのだろうか。


それから、俺と雫は彼女に挨拶をして、帰路についた。
最寄りの駅の改札を出て、言葉少なにマンションまで歩く。
ふと、雫の手が俺の手に触れた。その瞬間を逃さず、俺は華奢な手を捕まえ、ぎゅっと握った。雫は抗わない。手を繋いで歩いたのは初めてで、緊張よりあたたかな気持ちでいっぱいになった。

「あのね、徳島先輩が、高晴さんのことカッコいいって」

小学生のような報告に、照れるより愛しさが募る。

「そんな内緒話してたの?」
「うん。あとね、高晴さんの言葉、素敵だったって。良い旦那様だねって」
「そうか」

彼女の先輩に良い印象を持ってもらえるなら嬉しいけれど、そんなことより早く雫とふたりきりになりたい。
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