愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
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その週の水曜日は雫の実家で食事だった。雫は休みで、俺は仕事後に直接駆けつける格好だ。
ちょうど雫の弟の祐樹くんが帰ってきているタイミングで、一緒に夕食でもという話になったのだ。
祐樹くんは福岡支社に転勤してもう2年だという。商社の総合職は大変だ。
開発部門にいる俺は、分類は研究職となるが、給与、手当ては総合職と同等で原則転勤はない。臨床試験や学会などもあり、とかく出張は多いけれど。
「高晴さん、たくさん召し上がってね」
雫の家族と食事をするのは結婚式以来だ。俺たちは見合いのその日に結婚を決めてしまったので、ふたりでデートすらしていない。互いの家に遊びに行って食事なんて機会はなかったのだ。
「高晴くん、新年度はやっぱり忙しいのかい?」
義父が気を使って話しかけてくる。
「ええ、社内的には関係あるわけじゃないんですが、関係先の病院は四月から新体制というところも多いです」
「なーんか、新年度って慌ただしいんスよね。俺だって四月真ん中に東京出張とか、ほんと勘弁してって感じですよ〜」
祐樹くんも会話に混じってくる。俺に気を使っていることもあるだろうけれど、この家は会話が多い。雫もよく喋るし、そういう家庭は明るく見える。
俺の育った家は会話がないわけじゃないが、祖父母両親と大人ばかりの中で、子どもは俺ひとり。ことさら明るく喋りたてるという環境にならなかった。それが俺の無口な理由かといえば、半分以上は俺の元々の性質だとは思う。
しかし、雫と暮らすようになってから、前より喋っている自信はある。雫に付き合って、会話しているうちに自然とだ。
子どもが生まれたら雫とたくさん話しかけて会話に混ぜてやろう。お喋りで陽気な子に育つといい。