愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
食事は気張ったところのない家庭料理で、寿司をとったりステーキを焼かれたりと気を使われなくてほっとした。義母も飾り気のない人だから、雫は母親似なのだろうなと思う。

食事が済み、俺が買ってきた和菓子をみんなで食べていると、義母が言いだした。

「そうそう、雫の写真がごそっと出てきてね。整理したから見て行きなさいよ」
「えぇ、やだぁ」

雫が顔をしかめる横で、俺は息を飲んだ。
子どもの頃や学生時代の雫の写真?
それは見たい。ぜひ見たい。
できれば、可愛いショットを一枚もらって帰りたい。

「なんか物置整理してたら、たくさん出てきたのよ。アルバムにしてあるのって一部だったのねぇ」
「第一子に対してもこの態度。お母さん、適当すぎない?祐樹、たぶんあんたはもっと写真ないわよ」
「俺もそんなことだろうと覚悟してる」

姉弟が実母への文句を言う横で、義母は俺に向かって言う。

「高晴さんも見たいわよねぇ」

お義母さん、ナイスパスです。俺は薄く微笑んで自然に言った。

「ええ、見てみたいです」

いいぞ。コントロールされた回答。いいエネルギー出力だったぞ。
見せてください、是非、今すぐに、そしてどうか幼児期と小学校時代、中高時代をそれぞれ一枚ずつください……などと鼻息荒く言ってはいけない。内心興奮しているなんて、雫にもご家族にも悟られてはならない。

「ほらほら、雫。あんたの部屋に用意してあるから、いってらっしゃい」
「うぇええ?」
「祐樹、あんたが雫の部屋まで案内してあげて」

あきらかに部屋で写真など広げたくなさそうな雫の代わりに、祐樹くんが案内役に任命されてしまった。
すまない、祐樹くん。でも、俺は奥さんの成長の記録が見たい。高校生くらいの雫を眺めたい。
変態みたいですまない。偽らざる本心だ。
< 128 / 172 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop