愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
どれくらい時間が経っただろう。

「ん」

短い声が頭上で聞こえ、私は飛び起きた。
高晴さんのベッドの横に椅子を持ち出し待機していた私は、知らぬ間に眠りに落ちていたようだ。

高晴さんの顔を覗き込むと、まだ精気のない瞳が私を見あげていた。
時計を見れば、時刻は深夜二時半。高晴さんが目を覚ました。

「雫さん……風邪引く」

高晴さんの声はかすれて弱々しかった。ちゃんとした言葉を聞くのも久し振りだ。

「風邪引いてる高晴さんに言われたくないよ。私は大丈夫」
「ごめん、……昨日の夕食食べられなくて」

謝るのがそこなんだと少し面白く思いながら、私は首を振った。

「お肉なんて冷凍できちゃうんだから。元気になったら焼いてあげるね。それより、何か食べられそう?」
「いや……」
「ほら、水分摂って」

ペットボトルを手渡し、上肢を起こすのを手伝う。
ごくりと喉を鳴らして水分を嚥下する高晴さん。まだ熱は高そうだけれど、昼間よりは受け答えがしっかりしている。少し回復傾向かな。たくさん寝たものね。

「汗かいてない?身体拭こうか?」

高熱なのだ。汗をかいたパジャマのままでは気持ち悪いだろうし、風邪が悪化してしまう。

濡れタオルを取ってこよう。ベッドに膝をつき、高晴さんを覗き込む格好だった私は、洗面所に向かうため床に足を下ろした。

「待って」
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