愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
「待って……高晴さん」

不安から、つい彼の胸を押しのけるような仕草をしてしまった。すると、高晴さんの手が私の右手首をぎゅっと握り直してきた。

「なんで?」

子どものような問いが返ってくる。
その声の哀切に顔をあげ、私は驚いた。
間近く見上げた高晴さんの顔は、ひどく切なく歪んでいたからだ。

「たくさん、待った。もう待ちたくない。雫がほしい」
「高晴さん……」
「ずっと、見合いで会う前から雫が好きだった。俺のものにしたかった。雫、好きだ。雫の全部がほしい」

高晴さんは私が好き?そんなに前から?
知らなかったよ。私、全然そんなこと知らなかった。
早く聞きたかったなぁ。私、ずっと片想いだって思ってきたんだもん。

……でも、まあいっか。今、この瞬間だからいいんだよね。

ああ、そうなんだ。
その時が来たんだ。

私は彼の汗ばんだ頬に右手で触れた。こんなに欲してくれている人に、野暮なことを言うのはやめよう。

「高晴さん、私でいい?」

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