愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
おもむろに雫がブラウスのリボンタイをほどいた。
凍り付く俺を見もせずに、ひょいひょいとボタンも外していく。

「し、雫さん!?」

雫は無言で、ブラウスを肩から落とした。ベージュのタンクトップとその下に覗く紺のレースのブラジャー。それから、雫はスカートのサイドホックをはずそうとする。俺は慌てて叫んだ。

「雫さん、何をやっているんだ!」
「ゆうべは『雫』って呼んでくれたのに、『雫さん』に戻ってる」

雫は手を止め、うつむいている。

「私とセックスしたこと、後悔してる?」

俺は言葉を失い、唇を噛み締めた。
後悔じゃない。その意味では後悔していない。
だけど、方法とタイミングを完全に間違えた。返答を迷っていると、雫が勢いよく顔をあげた。

彼女の表情を見て、愕然とした。
雫が……泣いている。
柔らかな頬には幾筋も透明な涙がつたっていた。

「抱くべきじゃなかったって思ってる?居心地のいいルームシェアみたいな関係がよかったと思ってる?面倒なことになったって思ってる?」
「思ってない、そんなこと」
「じゃあ、なんでそんな悲しい顔してるの?今朝からずっと……!」

俺はハッとして彼女の潤んだ瞳を見つめる。もしかして、俺の態度こそが彼女を傷つけていたというのか?
雫がかぶりを振って叫んだ。

「私は……高晴さんが好きだから!こういうことになって嬉しい。嬉しかったの!だけど高晴さんは違ったんだね。勢いでしてしまって、後悔してるんだね」
「違う!そんなことない!」
< 159 / 172 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop