愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
「荷物?」

高晴さんが持ってきたのはダンボール箱だ。宅配便だったらしい。

「俺の実家からだ。なんだろうな」

エッチなムードは一時中断。ふたりでガムテープをべりべりはがして中を開けてみる。

「あ、野菜だ!」

中には土のついた野菜がぎっしり詰まっている。トマトにナスに青菜にきゅうり、小さなとうもろこしもある。
一枚絵手紙が入っていて、それはどうやらお義母さんの手描きのようだ。朝顔の花が描かれている。高晴さんが読み上げた。

「『お父さんが作った野菜を送ります。今年は出来がよかったので』だそうだ。父親、退職してから野菜づくりにハマっちゃってな。もともとあっちの生まれだから、畑は代々あるんだ」
「へー、助かるねぇ。旅行行ってたら受け取れなかったしちょうどよかったかも」
「送る前にひとこと言ってくれればよかったんだけどな。まあ、俺たちも旅行に行くって言ってなかったしおあいこかな」

たくさんの新鮮な野菜は、きっと大型台風が来る前に急いで収穫したのだろう。
ちょっとテンションがあがってきたぞ。今日はお夕飯が終わっちゃったけど、明日はこれで美味しいお料理を作るのも楽しそうだ。台風に閉じ込められてるんだし、おうちでできることっていいよね。

「ん、これは……」

高晴さんが声をあげた。手にはファンシーなビニール袋があり、中を覗いている。

「なに?それは野菜じゃないの?」

横から覗き込むと高晴さんが中身を出してくれた。

クマのぬいぐるみが入っていた。
最近のぬいぐるみとは表情が違い、首に巻かれたギンガムチェックのリボンなどオールドスタイルな雰囲気が漂う。
毛は少し固まりごわごわしているけれど、全体的に綺麗だ。保存が良かったのだろう。

「ベアぞうだ」
< 169 / 172 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop