愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
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お見合いをしてみない?
母親に持ちかけられた時は正直「またか」と思った。「たまには帰ってきなさいよ」と実家まで呼び出された理由に俺は天を仰いだものだった。
過去二度の失敗を母は忘れているようだ。お見合いにはふたつ黒星がついている。
確かに二度とも俺自身が乗り気ではなく、相手を退屈させてしまった自信はある。もともと口下手で表情に乏しい俺がむっつり黙り込んでいたら、未来の夫として楽しい家族設計は描けないだろう。女性たちには悪いことをした。
しかし、結果として二度のお見合いは失敗で良かったのだ。
男30歳、結婚を考えるにはまだ早い。
特に俺のような業種は大学院や研究室に居残ったりして、社会に出るのが遅くなる。今はまだ下積みだ。
仕事に集中したいし、ひとりで自分のことはある程度できるのだから、縁がなければ一生ひとり身でもいい。
同期の日向曰く、「忙しい職業なんだから忙しくなる前にパートナー捕まえとかなきゃダメよ」だそうだ。
そんな日向は大学時代から10年以上付き合う男性がいる。自分が研究職に就きたいという夢を早い段階から相談し、彼には福利厚生のしっかりした大手一般企業に就職してもらったそうだ。
「これで、私がいつか妊娠出産しても、彼が育休を取ってくれるから、早く職場復帰ができる」という日向は用意周到というか、なんというか。ある意味尊敬する計画性だ。
しかし、そんなに準備万端に生きている人間はいないのだ。
研究に没頭した俺には一度か二度しか恋愛のチャンスは巡って来ず、そのどちらも一・二度の逢瀬で終わってしまった。
割り切った身体の関係はともかく、恋愛の経験はほぼない。
ほらな、一生ひとり身の方が現実感ある人生設計だ。