愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
思えば、彼女がお見合いでの緊急プロボーズを受けてくれたところから、俺の心は喜びと同時に不安に支配されるようになっていた。

どうして彼女が俺との結婚を承諾してくれたのかわからない。
聞けば読書が趣味でインドア派であるという彼女。俺の提示した条件が彼女の穏やかな生活に合っていたのかもしれない。
この人なら将来苦労せず、好きな仕事をしつつ、休日は趣味の読書に没頭できると思ったのかもしれない。

それならいいのだ。俺は彼女にメリットを提示したつもりだ。

しかし、夫婦契約イコールですぐに性交渉OKかと言われると自信がない。
結婚なのだからそこも織り込み済といえばそうだ。

しかし、俺は言った。子どもを持つかは彼女に任せる、と。つまりは子どもを作る行為自体の判断も彼女にゆだねたことになる。

女性に任せるなんて、そんな無責任な。男としてこういったことはリードすべきだ。……と考える俺は確かにいる。

しかし、絶対に嫌われたくなく、なんとしても生涯円満に幸せに暮らしたい妻に「え?そんなつもりなかったんだけど」なんて死んでも言われたくない。
デリケートな部分だからこそ、早まりたくないのだ。

結果、俺は同居初日の夜、彼女にひと言の様子伺いすらできずひとり寝室に逃げ出した。

ここまで様々な言葉で言い訳してきたが、簡単に言えば俺は怖気づいたのだ。
下手なことをして嫌われたくない。
そうだ、今夜急がなくなっていいじゃないか。ゆっくりと時間をかけて、彼女の真意を見極めていけばいい。
もっと仲が深まれば、家族計画について話し合うことも出てくるだろう。性交渉を持つか否かはそこで話し合えばいいじゃないか。

童貞に毛が生えた程度の俺にできる精一杯の現状問題先延ばし案だった。
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