愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
「高晴さん、お夕飯は?」
「食べていません」
「あ、ホントに?私もです。帰って何か作りましょっか?」
「疲れているでしょう?コンビニでカップスープとサラダでも買って帰りませんか?」

雫がほっとしたように頰を緩める。腹は減っているから、本当はがっつり食べたい。だけど、これから彼女が作るのはかわいそうだ。材料だって家にないかもしれないのに。
かといって、ラーメンやファミレスじゃ女性には高カロリーになってしまうだろう。

俺たちは一番近所のコンビニで、カップスープをふたつ、大きめのサラダをひとつ、サラダチキンとおにぎりをひとつずつ買って帰宅した。

「高晴さんは明日もお仕事でしょう?こんな時間になったら朝起きるの大変ですよね」

お湯を沸かしたりテーブルを拭きながら雫が言う。
俺はスーツから部屋着の長袖Tシャツに着替えて答えた。

「たまにですからね。思ったより激務ではないんですよ。雫さんは明日お休みでしょう?」
「ええ、のんびりさせてもらいます」
「何をして過ごすのですか?」

俺の問いに雫がたじろいだ。あからさまに視線が泳ぐ。なんだ?俺は無神経なことを聞いてしまったか?

「えっと……読書……ですかね」

ようやく雫が小声で答えた。読書、やはり趣味なんだな。

「たくさん本を読まれると、お見合い前に母から聞いたことがあります。どんな本を読まれるのですか?」
「うえ、ええと、……フツーですよ。フツーの現代文学」

俺が何人か有名な作家をあげると、彼女はそうそれ!と俺を指差した。
と言っても俺も本を読む方ではないので、若い世代が好きそうな作家の名前をあげただけなんだが。
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