愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
「義理のご両親を去年見送って、ようやく外に出やすくなったっていうからランチしたんだけどね。聞いたら、ひとり息子の高晴くん、30歳になるんだけど、浮いた話のひとつもないって。今まで一度もだって恋愛っぽい気配がないらしいのよ!」

なんか、どこかで聞いた話になってきたぞ。私は顔をひきつらせる。

「いい大学でて、都内の大手製薬会社の研究員よ?理系男子よ?好条件なのに、まったく彼女がいないの!もう、晶子ちゃんが心配しちゃって。そこで、私も『あ、うちにも似たのがいるわ!』ってね」

ほらほら、出たよ。奥様会合でアラサーの余ったもん同士くっつけちゃわないってなったんでしょ。
お互い気心も知れてる女友達同士、「親戚になるのも安心よねぇ」なんて話になったんでしょ。

「で、私携帯に入ってたあんたの写真を晶子ちゃんに送ってね。ほら、去年温泉に行った時の」
「え?あの温泉の浴衣着てビールグラス持ってるヤツ!?あれ送っちゃったの!?」

私は目を向いて身を乗り出した。母はニコニコ答える。

「うんうん、そう。ちょっと可愛い顔してたからいいかなって」
「よくないわよ!!」

母が送った写真は夜の宴会場でビールグラスを持って上機嫌の私の写真だ。
可愛いってのは親の欲目だからね!髪なんかお風呂あがりにまとめただけだし、化粧なんかほとんど落ちてるし!
信じられない!よりにもよってそんな写真をお見合い用に渡すかなぁ!?

「見て見て。これが高晴くんよ。今年のお正月に帰省したときのだって言うから最新よ」

憤慨する私を丸々無視して、母が携帯の液晶を水戸黄門の印籠のように見せてくる。
見る気もなくなってるけど、一応覗き込んでみた。

画面に映っているのは黒髪短髪の男性だ。メガネをかけ、少し困った風に笑っている。
なんというか……ちょっと驚いたけどイケメンだ。
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