愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
「うちはご飯だ!ど、どうしよう!パンにしましょうか?買って帰る?ご飯は冷凍しちゃえばいいんだし」
「いや、いいんだ。雫さんの家の味ならご飯に合うんだろう。気にしないで」

私が慌てたので高晴さんも慌てる。といっても、声のトーンも表情もあんまり変わってないんだけどね。
それにしても、この先も食習慣の違いで戸惑わせてしまうこともあるかもしれない。

「わー、でもご飯が進まない味になっちゃったらどうしよう。何しろ、食べるばっかりで作るのは初めてだから。お漬物とか、買って行きましょっか?納豆とか」
「いいんだ、雫さん。雫さんの作ったものならなんでも美味しいから」

高晴さんがなだめるためなのかさらっと殺し文句を言う。
ああ、なんだか嬉しい言葉をもらっちゃった。
社交辞令かもしれないけど、私は単純だからそういう言葉を喜んでしまう。

「高晴さん、ありがと。頑張って作るね」

見上げてにっこり笑うと、高晴さんはふっと目をそらしてしまった。

あらら、なんかダメだったかな、この返し。
私としては感謝を伝えたかっただけなんだけど。

たまにある。高晴さんは会話の最中に目をそらしてしまったり、背を向けてしまったりするのだ。言いよどんで口元を押さえてしまうこともある。
そのたび、返しをはずしたかな~って思って焦ってしまう。

高晴さんは優しい。しかし、本人も言ってたけれど、口下手というのは本当だと思う。表情も薄くて、笑顔はあまり見られない。コミュニケーション全般が苦手みたい。

だから、余計に高晴さんの気持ちってわからないことが多いんだよね。
日頃、私のために一生懸命喋ろうとしてくれてるけど、それだってプレッシャーに感じさせてないかなと不安になる。苦しめていたら、すごくいやだ。

はあ、他人と家族になるって難しい。
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