愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
日向はサラダとアンティパストをばりばり食べながら、特に言葉を差し挟みもせず最後まで聞いてくれた。

「なんとなくね~、うまくいってないのかなってのは感じてたんだよね」

俺の話が終わると、ごくりとグラスの水を飲み、日向は言った。

「奥さんと休み合わないでしょ。それなのに、榊、あまりまくってる有休使わないからさぁ。なんかおかしいなあって。毎日、早くは帰ってるけど、妙に焦ってるし。新婚のラブラブ幸せオーラを今ひとつ感じないんだよね~」
「そ、そうだったか!?そんなふうに見えていたのか?」
「飽くまで女の勘よ。今、榊の話を聞いて合点がいったってだけだし」

ちょうど、俺たちの前にパスタがやってきた。
今日のパスタはアサリのカッペリーニだとウエイトレスが言っていた。いい香りがして美味しそうだ。

「抱いちゃいなさいよ、夫婦になったんだから」

日向は最初の大きなひと口を咀嚼し終え、飲み込んでから言った。
かなり大胆な発言で、俺は口に運びかけたフォークをおろし周囲を見回したくらいだ。幸い、店内の女性客はそれぞれの話に夢中で、俺たちの話が耳に届いた様子はない。

「好きな男がいようがいまいが、彼女だって覚悟済みよ」

日向はあっさりと言い、次のひと口分をフォークに巻き付けている。

「でも、浮気を疑いながら、そんなことをするのは不誠実だとは思わないか?」

疑いをかけたまま身体だけ求めるなんて、あまりに直情的じゃないか。
それに、彼女が我慢しながら俺に抱かれるのかと思うと、可哀想で、気持ちが萎えてきてしまう。
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