愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
「条件を提示した結婚だ。契約みたいなものだ。性交渉については最初から名言していないから、気軽に誘えるようなものでもない」
「あーら、真面目。それなら、彼女にはっきり聞いてみたら?好きな男がいるのかって」
「浮気を疑っていると思われたら、せっかく築いてきた信頼関係が台無しじゃないか。表向き、平和な夫婦なんだ。波風を自分からたてたくない」

日向が肩をすくめる。
俺の皿がまったく減っていないのを見るや、少し黙って考える風な表情になる。この隙に食べろということだろうか。大きくひと口とって口に運ぶと、次の言葉がやってきた。

「じゃあ、彼女に子どもについてどう考えるか聞いてみるのはどう?家族計画なんだから、聞いても差し支えないでしょ」

俺はふた口目のフォークを唇に近づけることなく下ろし、力なく首を振る。

「彼女は店舗責任者だ。簡単にキャリアを中断して妊娠出産に挑むとは思えない。『まだ考えていない』とか『子どもはいらない』なんて言われたら、いよいよ彼女と夫婦の接触をする機会は失われてしまう。慎重にいきたいんだよ」

日向はもくもくとパスタを口の中に押し込み、咀嚼しつつ腕を組む。ごくんと音が出そうなほどしっかりと飲み込み、俺を見つめた。

「んん~そういうことなら、やっぱり彼女と関係を持つしかないわ。何も知らないふりをして、きみを抱きたいって言えばいいのよ」
「だから、日向。そういう不誠実なことは……」
「彼女は榊が気付いてるなんて思いもしていないのよ。不誠実には当たらないの。形だけの夫婦だろうと、夫から誘われては断りづらいはず。一度二度は体調を理由に断っても長くは続かない。身体の関係を持ったら、そこからはあんたの腕の見せどころよ。毎日とろとろになるまで甘やかして愛してやんなさい。彼女が他所の男なんて、どうでもよくなるくらい」
< 73 / 172 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop