愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
結局その晩は、日向と兼広さん、他にも同僚が四人という人数で飲みにいった。
最初が最寄りの大井町、二件目は日向と兼広さんの帰る方向に合わせて渋谷で飲んだ。あまり酒が強い方ではないが、コントロールすればはしご酒も付き合える。男所帯の研究開発部門だ。飲み会は若い頃から数をこなしているつもりだ。
二件目の居酒屋に入る直前、渋谷の雑踏の中に見知った顔を見た気がした。
それは俺の奥さんの顔で、ほろ酔いの俺には交差点の向こうのそこだけが光って見えた。
俺はメガネを押し上げ、妻の面影を追った。
なんだか情けなくなった。こんなところでまで好きな女を探している。
家に帰れば会えるのに、彼女との距離はこの雑踏と同じくらい離れているのだ。何かを根本的に変えなければ、俺たちはずっとスクランブル交差点の反対側のままだろう。
すると、俺の首に腕を巻き付け下に引き寄せる人物がいる。
「榊、なにボケっとしてんのよ!行くぞ!」
日向だ。痛い。乱暴者め。酔っているせいか、普段より同僚の扱いが雑だ。
「もう酔ってんのか?榊はだらしないな~」
横から兼広さんも俺の背中に腕をまわし、二件目の居酒屋の方向にどんと押すのだ。この人の方がとっくに酔ってる。上司とはいえ、俺は家まで送らないからな。
「大丈夫ですから、ふたりとも離して」
「いやだ!こい!」
日向と兼広さんに首根っこを掴まれ、俺は引っ張られるように居酒屋に入って行った。
最初が最寄りの大井町、二件目は日向と兼広さんの帰る方向に合わせて渋谷で飲んだ。あまり酒が強い方ではないが、コントロールすればはしご酒も付き合える。男所帯の研究開発部門だ。飲み会は若い頃から数をこなしているつもりだ。
二件目の居酒屋に入る直前、渋谷の雑踏の中に見知った顔を見た気がした。
それは俺の奥さんの顔で、ほろ酔いの俺には交差点の向こうのそこだけが光って見えた。
俺はメガネを押し上げ、妻の面影を追った。
なんだか情けなくなった。こんなところでまで好きな女を探している。
家に帰れば会えるのに、彼女との距離はこの雑踏と同じくらい離れているのだ。何かを根本的に変えなければ、俺たちはずっとスクランブル交差点の反対側のままだろう。
すると、俺の首に腕を巻き付け下に引き寄せる人物がいる。
「榊、なにボケっとしてんのよ!行くぞ!」
日向だ。痛い。乱暴者め。酔っているせいか、普段より同僚の扱いが雑だ。
「もう酔ってんのか?榊はだらしないな~」
横から兼広さんも俺の背中に腕をまわし、二件目の居酒屋の方向にどんと押すのだ。この人の方がとっくに酔ってる。上司とはいえ、俺は家まで送らないからな。
「大丈夫ですから、ふたりとも離して」
「いやだ!こい!」
日向と兼広さんに首根っこを掴まれ、俺は引っ張られるように居酒屋に入って行った。