愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
「雫さん?何かあった?」

冷蔵庫からお茶のボトルを出す彼女に問いかけると、彼女はそっぽを向いたまま言った。

「今日の夜、渋谷で見かけた」

え?渋谷にいたのか?
彼女の職場は原宿だったはずだが。

「渋谷の店舗に行ってたから」
「ああ、それで」

そうか、じゃあ俺が見た幻は本人だったのか。あんな雑踏の中での妻を見つけてしまうなんて、俺はどれだけ雫を好きなのだろう。

「楽しそうだったね。綺麗な女性と一緒で」

綺麗な女性……日向のことか。
いや、日向より雫の方が可愛い。そうじゃない!誤解されているようだ。
確かに日向は俺の首に腕を巻き付けていたし、距離は近かったように思う。

「同僚と七人で飲んでいたよ。きみが見たのは同期の日向だね」

飽くまで冷静に落ち着いて言う。慌てたら、嘘をついているように見えそうで、こちらも慎重だ。
雫は俺を見ずに、睫毛を伏せる。

「うん。他にも男性が何人か見えた。疑ったりしてるわけじゃない。……ただ思ったの」
「え?」
「高晴さんってあんな顔で笑うんだって。見たことなかったから。私といるの、楽しくないんだなってよくわかった」

頭を真横から殴られたような気分だった。

どうしてそんなことを言うのだろう。
途端に胸が悲しみでいっぱいになった。
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