愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
俺は口下手かもしれない。感情表現も上手くない。彼女には不満の多い夫だろう。
でも、俺なりにこの二ヶ月、頑張ってきたつもりだ。確かに浮気を密かに疑っていた部分もある。それでも彼女を信じたいという気持ちが俺を支えてきた。俺が努力すればいいと思ってきた。

雫といい夫婦になれるように。
雫に好きになってもらえるように。

しかし、何ひとつ、伝わっていなかったのだ。
俺が雫に与えていたのは不信感と退屈だけだった。

自分が情けない。

「きみこそ、……俺といても楽しくないんじゃないか?」

気づけばそんな言葉が唇から漏れていた。

ハッとした。俺は何を言っているんだ。
自己嫌悪から心に浮かんだ言葉をそのまま口にしたら、責任転嫁のようになってしまった。

雫がようやくこちらを見る。
驚いた。その目には涙の粒が盛り上がっていたのだ。

震える睫毛。
涙が一筋零れ落ちて、雫が唇を開いた。

「そうかもね。お互い様かな」

捨て台詞にしては弱々しい声で言い、雫は俺の横を通り過ぎる。
寝室に消える背中を追いかけることができなかった。

俺はひとり痛みのひどくなった頭を抱え、うつむいた。
なんてことだろう。
雫の信頼どころか、家族としての絆も失いかけている。



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