愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
表情は緊張からなのかまったく無く、時折お母さんズから話を振られても短く相槌を打つだけだ。
私もお客様相手じゃないから進んで話はしなかった。お母さんに振られれば陽気に答えるけれど、自分を良く見せようって気持ちにはならなかった。
飾らず自然体の方が……というのは建前で、なんとなく、私が何をしてもこの人の表情変わらないんじゃないかなーって思ったんだよね。

過去二回のお見合いもこんな感じだったんだろうなぁ。ここまで無表情で会話なしだと、『いざお見合い!!』でやってきたお嬢さんたちは『馬鹿にされた!!』くらいは思ったかもしれない。わざとじゃないんだろうけれど、ううーん……。
ま、私は半分付き合い、半分興味本位なんであんまり気にしてないですけどね。


食事が済むと型通り「若い二人で」という話になり、私と高晴さんはホテルの庭園に放り出された。今日会ったばかりのふたりにいきなり打ち解けてこいとツーショットにさせるお見合いという暴力。体験してみるまでわかんなかったわぁ。

私たちは黙々と庭園を歩いた。高晴さんはやはり喋らない。さすがにずっと無言はやだなぁ。
私は少しだけ商売っ気を出して、お客様に向かうようにニコッと笑った。ちなみに私は下着メーカー店舗勤務なわけで、お客様は全員女性だぜ!

私の笑顔に、高晴さんがたじろいだような顔をした。うお、外したかな?一応、心象良く笑ったつもりなんだけど!

「今日はお互い、母親の付き合いで連れ出されて、困っちゃいますね」

明るく笑いかけ、親に巻き込まれた同志であることを強調する。

「突然、お見合いとか言われても驚きますよ。高晴さん、無理しないでくださいね」
「いえ」

高晴さんは目をそらし、短く答えた。
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