愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
売店やトイレの位置を窺う私に、高晴さんが声をかける。
ホームで手渡されたのはA5サイズの冊子だ。プリンタ用紙をホチキス留めしてある。手作りだよね。

「なんですか?」
「今日の日程なんだ」

ぺらっとめくってみるとそこには今日のタイムスケジュールが載っていた。パラパラページを繰れば、目的地の写真と概要、途中の交通費まで書かれてある。

手製のガイドブック……どっちかって言うと修学旅行のしおりに近いな、うん。
もしかして、ゆうべはこれを作っていて遅くなったのかな。

この人、わかっちゃいたけど、マニュアル男なところあるよね。
こういうところに引いちゃう女の子は山のようにいる。

でもね、高晴さん、面倒くさがりで箱根に来たことがない私は思います。
『なんて気の利く人!』
あ、機会があったら言うけど、これは万人にやっちゃだめだからね。私の価値観が修学旅行のしおりを許容できたってだけだからね。

「高晴さん、ありがとう」

ようやく真っ直ぐ彼を見上げる。高晴さんはいつもみたいにふいっと視線をそらしてしまった。

「いや、俺は来たことないから、事前に調べただけで。そのついでだから」
「私も来たことないんだ。助かる」

高晴さんはかすかに頷き、先に背をむけて改札に向かってしまう。
旅行はスタートしたばかりだけど、ギクシャクした感じがてんこ盛り。はあ。


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