愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
箱根湯本の駅に戻り、バスを降りればそこは温泉街だった。お土産物屋が並ぶアーケードを進み、7、8分歩いたところに今日の宿があった。
老舗とはきいていたけれど、綺麗なホテルだ。年季が入った古いホテルを改築したって感じかな。

チェックインをして、お部屋まで案内がついたので、おやとは思った。

「すごい……」

高晴さんがとってくれたのは、たぶんこのお宿で一番いいクラスのお部屋だ。
広々とした和室とカーペット敷きの板の間。ソファとリクライニングチェア、マッサージチェアもある。奥には洋室もあり、ふたりで泊まるには広すぎるほどだ。

「こんな部屋だったとは……」

横で高晴さんも呆然としている。ちゃんと調べないで予約したな、この人。
お金大丈夫かな。すんごい高かったら私も出そう。

「景色綺麗だろうなぁ。見てみよう」

部屋の迫力に気圧されないよう、ボストンバッグを入り口に置き、窓辺に駆け寄って私は固まった。
窓の向こうには露天風呂がある。……部屋から直結の貸し切り露天風呂だ。
そして、このお風呂、部屋から丸見えじゃない!

「お風呂……」

私がそれきり絶句していると、隣にやってきた高晴さんがやはりぎょっとして、慌てて言う。

「大丈夫!雫さんが入っているときは!カーテン閉めるから!遠慮なく使った方が!いい!」

動揺からか、言葉がかなりぶつ切れだ。
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