愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
「あは、あはは、そうだよね。せっかくの部屋風呂でさらに露天だもんねえ。うんうん、それぞれ使おう。カーテン閉めてさ」

新婚ご夫婦やカップルなら、ふたりで入るのだと思う。私たちの脳裏に浮かんだのはまさにそれで、今までの恥ずかしさが爆発して、いよいよ言葉が見つからなくなってしまう。

ああ、どうしよう。仲良くしたいし、きちんと仲直りもしたい。
それなのに、ふたりきりの恥ずかしさと気まずさが増すばかりで全然うまく喋れないよ。

「雫さん」

真横で高晴さんが言った。ふたりで露天風呂を呆然と眺めていたタイミングだから、驚いて見上げる。
高晴さんはこちらを見ていない。窓の外へ向いた視線は険しいくらい。
なになに、なんか怒ってる?私、変なこと言った?
彼の唇が小さく動く。

「この前のこと、すまなかったと思っています」
「え、え?あ、うん」

一瞬なんのことだろうと考え、すぐにこの旅の直前の喧嘩を思い出す。

「感じの悪い言い方をしてしまった」
「そ、それは私だから!ごめんなさい!」

怒鳴るような声になってしまった。
困って見上げる私の目に優しい瞳の高晴さん。あ、こっち見てくれてる。

「俺は、きみと家族を続けたいから……一緒に旅行できて嬉しい」

柔らかな笑顔、細められた瞳、私の心臓がきゅうっと痛くなった。
なにこれ、すごく胸が苦しい。痛いし苦しいけど嫌じゃない。

「高晴さん……」
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