愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
私が答えようとした瞬間、彼の頬がぶわっと赤くなった。
びっくりするくらいの変化で、きっと彼はこの言葉を言うタイミングをずっと計っていたんだと気付く。
ああ、だから、彼はずっと無口で緊張した顔をしていたんだ。

「お、俺、大浴場に行ってくる。きみは露天風呂でも入っていたらいいんじゃないかな」

高晴さんは視線をずらし、途端に早口でまくしたてると自分のバッグの方へ行ってしまった。

急いでお風呂に行ってしまった高晴さんを見送り、私もお風呂の準備。
心臓はさっきからきゅうきゅういっている。
高晴さん、逃げちゃったけど、それがマイナスな意味じゃないのは充分すぎるくらいわかっている。高晴さんの本音はあの言葉。わかるよ、伝わるよ。

洗面所と内風呂の先に露天風呂がある。
円形の大理石風の湯船に浸かれば、歩きまわって冷え切った身体がじわりとお湯で温められる。気持ちいい。
私はほおっとため息をついた。

「私も、高晴さんと旅行に来られて嬉しいよ」

本人に言えなかった言葉を夕焼けの始まりかけた空に向かって呟く。
余計に胸がきゅうきゅうした。
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