ピノ・ブラン -苦酸っぱい恋の終わり-
春の夜は、風が冷たい。


一人で駅に向かうのにも慣れてしまった。

最初の頃こそ駅まで送ってもらったりどちらかの部屋へ泊まることも頻繁だったけれど、最近ではすっかりそれも無くなった。


彼に飽きられてきていることはわかっている。



最初に声を掛けたのは、私だ。

教授の紹介で参加した学会のパーティで見かけて、一目ぼれをした。

いつか会えないかと考えあぐねていたとき、たまたま通りかかったバーに入っていくのを見かけて、反射的に追いかけた。


そして、慣れないお酒を片手に近づいた。


想像より遥かに冷たく、手の早い男だった。

何より、周知の恋人の存在があった。



それでも、手の早さに助けられた。



一回で終わらせまいと、あしげなく通いつめて回数を重ねた。

なにより、私には共通の話題があった。

それは、他の女を跳ね除けて話込んでくれる程には彼が重要視している私のスペックだった。



最近は体を使わなくても話だけで時間が持つ。

気付けば2人でお酒を飲んでいる。

何も言わなくても同じテーブルやカウンターの隣に座り、何気なく会話が始まる。



それでも、彼はやっぱり恋人のいる男だった。



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