ピノ・ブラン -苦酸っぱい恋の終わり-
「ハルカくん、この子に優しいのね」
「ナツメ」
少し声に怒りっぽいため息が混じった。
きっと、この問答は珍しいことではないのだ。
「ごめんね。ハルカくん長男だから、年下はつい甘やかしちゃうみたいで」
小首を傾げた彼女が、敵意を含んだ言葉を私に向けた。
「お店でも仲良くしているみたいだけど・・・家庭のある身になるんだし、これからはよろしくね」
彼女は私から目を離さず、いつの間にか愛想の良かった表情から笑顔が消えていた。
まったく、この女は。
ため息をついてから、手の中の白ワインをぐっと全部飲み干した。
勢いよく流し込むと、むせ返りそうになる酸味に眉根が寄る。
もっとたくさんお酒を飲んで置けばよかった。
そう思ってふと、いつの間にこんなにお酒に頼るようになったのかとおかしくなった。
「…なにも、ご存知ないんですね」
元々口角の高い顔立ちが功を奏し、笑顔は得意だ。
「そんなに牽制しなくても、大丈夫ですよ」
彼女だけを見つめて話す。
その横にいる男の顔も、隣でついてこれていない男の姿も見ないように目を見つめた。
「私、もうずっと前にふられてるので」
「え…」
「彼女と別れる気はない、って」
それはもう、随分と前のことだ。
「そんなに牽制しなくても大丈夫ですよ。あなたに言われる前に、本人からちゃんと言われてますから」
彼がバツの悪そうな顔をしている。
「それ以上、何を不安に思うことがあるんですか」
「ナツメ」
少し声に怒りっぽいため息が混じった。
きっと、この問答は珍しいことではないのだ。
「ごめんね。ハルカくん長男だから、年下はつい甘やかしちゃうみたいで」
小首を傾げた彼女が、敵意を含んだ言葉を私に向けた。
「お店でも仲良くしているみたいだけど・・・家庭のある身になるんだし、これからはよろしくね」
彼女は私から目を離さず、いつの間にか愛想の良かった表情から笑顔が消えていた。
まったく、この女は。
ため息をついてから、手の中の白ワインをぐっと全部飲み干した。
勢いよく流し込むと、むせ返りそうになる酸味に眉根が寄る。
もっとたくさんお酒を飲んで置けばよかった。
そう思ってふと、いつの間にこんなにお酒に頼るようになったのかとおかしくなった。
「…なにも、ご存知ないんですね」
元々口角の高い顔立ちが功を奏し、笑顔は得意だ。
「そんなに牽制しなくても、大丈夫ですよ」
彼女だけを見つめて話す。
その横にいる男の顔も、隣でついてこれていない男の姿も見ないように目を見つめた。
「私、もうずっと前にふられてるので」
「え…」
「彼女と別れる気はない、って」
それはもう、随分と前のことだ。
「そんなに牽制しなくても大丈夫ですよ。あなたに言われる前に、本人からちゃんと言われてますから」
彼がバツの悪そうな顔をしている。
「それ以上、何を不安に思うことがあるんですか」