よくばりな恋 〜宝物〜
「紅は?まさか紅も斯波さんについて行くとか?」
微かに笑を浮かべるけれど、瞳は揺れる。
それは無い。
多分、その前にお別れを切り出されるだろうからーーーーーー。
もうカウントダウンは始まっているのかもしれない。
駅に降り立ち、腕時計を確認して紅は自然と早足になる。さっき『家に着いた』とスマホに連絡が入った。
マンションのエントランスのインターホンを押そうとしてシャワーを浴びていたらと思い、自分の鍵を出す。
部屋の鍵を開けると空斗が上半身裸で着替えを手にしてバスルームに入ろうとするところだった。
「おかえり、紅」
艶やかに笑う空斗。
「ただいま、空くん」
すぐに腕が伸びてきて、腰を引き寄せられ、軽く空斗の唇が紅のそれに重なる。
「ビール味」
空斗がさっきまで飲んでいた紅を茶化す。
「ご飯は?」
「簡単に研究所の側のファミレスで済ませた」
「お茶漬けでも食べる?」
「紅、それ京都人のオレに言わせると『早よ帰れ』って聞こえるんやけど」