よくばりな恋 〜宝物〜


ねえ、空くん。

胸のザワザワはもう治まってしまった?



いつも空斗は優しいのに、紅は聞けない。

強引に押し切られて始まったお付き合いだったのに、空斗が笑うたび、空斗に甘やかされるたび、空斗と過ごす時間が積み重ねられていくほどに、紅の心の中に雪が降り積もるように「好き」が溜まっていく。



もう溢れてしまいそうーーーーーー。



「あーっ、気持ち良かった」


お風呂から出てきた空斗が紅の背後に立つ。


吹きこぼれそうになっていた鍋を慌ててコンロから下ろし、丼にうどんをうつしてたまごを落とした。

テーブルにセットし、空斗が食べ始めたのを見てから紅はお風呂に行く。


ハッキリさせないとーーーーそう思うのに、空斗の側は最高に居心地が良くてネガティブな答えが返されるのが怖くて何も言えない。


「あい」がいちばんなら、空斗を解放してあげないとと思うのに、自分から別れを切り出してあげられるほどお人好しにもなれない。
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