よくばりな恋 〜宝物〜
最愛
昼休み、空斗はアメリカの科学雑誌片手にサンドイッチをつまんでいた。今月号は会社の1つ先輩である立花が論文を発表している。
「どうよ?」
声をかけ、隣の席に座ったのは当の本人だ。
「ああ、いいっすね」
「アッサリだな」
「そら多少は悔しいですし」
「お前にそう言われるならまあいい出来だな」
立花は同期の坂田の婚約者だ。
来年、研究所の移転と同時に結婚を決めている。
空斗もいい加減、何とかしなければと思ってはいる。ただ紅を前にすると何も言えずつい先送りにしてしまっていた。
「斯波、お前さーー」
言いかけた立花が言葉を切る。どうやらスマホが鳴っているらしく、パンツのポケットから取り出した。
「珍しいな、ちょっと悪い」
そう言った立花がスマホに出て、何事か話している。その立花が徐に空斗にスマホを渡してきた。
「最初に謝っとく、すまん。乃里からやけどな、アイツ南河内の育ちだから」
空斗は受け取りながら首を傾げる。乃里の育ちが南河内だから何だと言うのだ。