よくばりな恋 〜宝物〜
勇気を出そう。
「あい」がいちばんなら紅はもう要らないはずだ。辛くてもあの愛しい手を離さなければ。
ピンクのベッドカバーが紅が顔をつけている部分だけ水分を吸収し色が濃くなっていく。
「紅!!」
玄関のドアを開ける間ももどかしいと言わんばかりに靴を乱暴に脱ぎ散らかし、空斗が駆け込んできた。
「え・・・?」
びっくりして思わず紅が身体を起こすと空斗が肩で息をしながら近付いて来る。
紅の頬に伝う涙を痛ましそうに空斗が手で拭う。
「ごめん」
謝る空斗に紅の心は沈み込み、益々涙が溢れた。
どうしてここにいるの?
何を謝るの?
空斗のいちばん好きな「あい」に紅が会ってしまったから?
会ってしまったことをもう聞いたの?
「わたし・・・空くんのいちばんやなかった・・・・・?」
空斗が目を見開く。
「空くん、優しいから別れたいって言えへん・・・?あかん・・・?もう傍にいてたら・・・」
もう頭の中がぐちゃぐちゃで、何も分からない。
俯く紅には空斗の表情も分からない。
これで最後ならちゃんと顔を見たいのに。