言えなかったよ。言いたかったよ。
「……彼女と一緒にいなくていいの?」
私はぽつりと呟く。
公園内にあるブランコでは小学生たちが遊んでいて、なにやら大声を出しているけど、私の声はてっぺーに届いたようだ。
「最後くらい綾瀬といるよ」
「………」
意味わかんない。最後だからこそ、彼女といるべきなんじゃないのって思うけど、もし今日てっぺーが私を選んでくれなかったら、もっと切なくなってた。
てっぺーは明日、遠くの街に引っ越す。
今日で一学期が終わり、学校にあったてっぺーの荷物はすべてなくなった。
机の中も虚しいくらい空っぽで、みんな明日からの夏休みに心を踊らせているのに、私はちっとも楽しみじゃない。
だって、パピコを半分こすることも花火をやろうと誘うことも、心霊番組を一緒に見ようと言うことも、もうできない。
明日、てっぺーはこの街にはいない。
私の隣にもいない。
こうしてシーソーを一緒にやることもできない。