言えなかったよ。言いたかったよ。
「俺、綾瀬と友達になれてよかったよ。つか、男友達よりもお前といるほうが楽しかったし」
まるで、永遠の別れみたい。私は悲しさよりもなんだかムッとしてシーソーを蹴るのを止めた。
ギーコーギーコー鳴っていた音はピタリと止まって、さっきまで騒がしかった小学生たちはもういない。
「てっぺーがいなくなったら、誰とシーソーやればいいの?」
そもそもやりはじめたのはてっぺーだ。
中学の時に些細なことでケンカして、何日も口をきかなかった時に呼び出されたこの公園で、てっぺーが『シーソーやろうぜ』と誘ってきた。
恥ずかしいからと断ったのに『いいから』と無理やりやらされて、私は右、てっぺーは左に股がり、シーソーをしながら会話をすることが、なんとなく当たり前になってた。
シーソーは、ひとりじゃできない。
17歳にもなって、やってくれる人なんて、てっぺーしかいない。