言えなかったよ。言いたかったよ。


「お前、俺以外友達いねーもんな」

「うるさい」

「彼氏もいねーし」

「……うるさい」


てっぺーに彼女ができたのは去年の夏だった。

相手ひとつ年下で同じ学校の子。お人形みたいに可愛くて、てっぺーにはもったいないぐらいの美少女だ。


付き合いが長いから、てっぺーの好きな女の子のタイプは知っている。守ってあげたくなるような小柄で、色が白くて、趣味はお菓子作りです、とか言っちゃう子。

趣味がプロレス観戦で、身長が160センチある私はてっぺーのタイプとはほど遠くて、女に見られていないことは知っている。


だからこそ長い間、ずっと一緒にいられた。

意識されてないからこそ、私の意識を気づかれないようにしてきたからこそ、てっぺーは最後の日に私を選んでくれた。



「あっちで浮気したら許さないからね」


これはふたつの意味。

可愛い彼女を泣かせるような男になってほしくないってことと、私以上に気が合う女友達を作らないでって意味。

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