言えなかったよ。言いたかったよ。
でもさ、言えないよ。
だって、最後だからと思っていたのに、てっぺーが最後だなんて思っていないから。
またパピコを半分こしたり、心霊番組を見たり、いい歳してシーソーに乗ったりする変わらない私たちの未来を、簡単に語ってしまうから。
もうすぐ日が沈む。シーソーを先に降りたのはてっぺーだった。
「じゃあ、俺行くわ」
寂しさで胸がぎゅっとなったけど、私は泣かない。
ここで泣いてすがるような女にはならない。
その代わり、友達の中での一番は誰にも渡さない。
本当は、友達以上になれたらよかったけど、悔しいぐらいてっぺーは彼女とお似合いだし、彼女もすごくいい子だから私にも慕ってくれている。
きっと、私も彼女に負けないくらいてっぺーが好きだけど。
本当は、出逢った時から、ずっとずっと特別だったけれど。
今はまだ、この関係のままでいい。
「綾瀬、またな」
言えなかったよ。
言いたかったよ。
それでも、これはさよならじゃない。
「またね、てっぺー」
笑顔で見送ると、てっぺーは何度も何度も振り返りながら、私の姿が見えなくなるまでずっと手を振っていた。
END