私があなたに惹かれた理由 ~S系若だんなとの出会い~
3.旅立ち
「新潟まで大人1枚。」
私は、みどりの窓口で片道切符を買って佐渡に向かうことにした。
篤志のいるこの街から出たい衝動に強く駆られていた。だから、あんなに早く支度して家を出てこられたんだと思う。
私は、昔からそういう質だった。一旦決めたら、突き進むという猪突猛進なところがあって、それがいい結果も悪い結果も生んできた。今回は、いい結果に繋がる様な気がする。だって、今はどん底にいるのだから…。
私は、どうにかして今を替えたかった。こんなことで人生を終わりにしたくなかった。だから、見知らぬ街に行って、自分を取り戻す事を決意した。
新幹線乗り場のホームに降りると、家に居た時とは全く異なる気持ちになってきていた。一人旅自体が初めてだったし、大勢の人が行き来して活気のような熱を感じる。家にこもっている間は、感じたことない温度だった。
ベンチに座り、切符を見ながら、「本当に行くんだな」という気持ちがふつふつと湧き上がってきた。ネットでは美味しそうな料理と、きれいな海、観光名所などが紹介されていた。今から向かって、泊まるところがあるかどうかも分からない。でも、今行かなきゃ絶対に後悔する。振り返らないことを決めたのだ。
そう思っていたところに、新潟行きの『MAXとき』が入ってきた。
数名の乗客に続いて乗り込むと、中はまばらだった。まぁ、この時間帯なら混雑するとは思っていなかった。なにせ、平日で午後だ。
私は、チケットにある番号を確認しながら、座席を探した。
窓側の席にしたので、新潟駅に着くまでの間、景色を見ることができる。そうすれば、余計なことを考えなくても済む。篤志のことを思い出したら、きっとまた泣いてしまうだろう。それに、自分を追い込んでしまう事を防ぎたかった。
席を見つけると、荷物を上にあげ、手荷物だけ持って席に座った。
席に座って外を見ていたら、篤志のことがよぎりそうになった。その時、『MAXとき』が動き出した。そのおかげで、思い出は消えてくれた。
走っていた新幹線が地上に出てしばらく経つと、車内販売員の姿が見えた。その途端、お腹が鳴った。そう言えば、ここ数日はお水だけしかお腹に入れていなかった。いいタイミングだった。私は、販売員さんを呼び止めた。
「鶏めし弁当と…、あとお茶ください。」
「はい、ありがとうございます。」
お弁当とお茶を受け取り、代金を支払うと、販売員さんは一礼してまたカートを押し始めた。私はあまりの空腹にすぐに食べ始めた。ガツガツ食べてしまうのがもったいないほどの美味しさだった。
そんなにも、私は飢えていたんだということを実感した。美味しい物好きの私が、こんなにも飢えた状態にあった事を意識出来ないくらいに、体も心もショックを受けていたのだ。
涙が出そうになったが、ぐっとこらえた。私はこんなことで負けちゃいけない。そう思って一生懸命にお弁当を食べた。
新幹線『MAXとき』は、驚くほど早く着いた。お弁当を食べ終わり、お茶を飲みながらぼーっとしているうちに、新潟駅に着くアナウンスが入った。慌てて上に載せた旅行カバンを下ろし、席を離れて出口へと急いだ。
新潟駅に降り立ち、足早に改札に向かった。駅を一歩出ると、澄み切った空が広がっているせいか、夕方なのに明るかった。今日のうちに何とか佐渡ヶ島に着きたいと思い、近くにいた駅員さんにどこへ行けばいいか尋ねることにした。
「すみません。佐渡ヶ島に渡りたいんですが、どこへ行ったらいいでしょうか?」
「ここの先が、タクシー乗り場だから、そこで佐渡汽船乗り場まで頼むといいですよ。」
「ありがとうございます。」
そう言って、お辞儀をした私は、何故か早足で出口に向かい、タクシーに乗り込んだ。
「佐渡ヶ島に行きたいんですけど」
「はい、汽船乗り場だね。お客さん佐渡は初めて?」
「はい。」
「じゃあ、次出港の船に乗れるように急ぐから、シートベルト締めてね。」
「はい。」
運転手さんは安全運転と言いながらもタクシーをとばしてくれたので、あっという間に、汽船乗り場まで乗り付けた。
「ここの階段を上れば、切符売り場だからね。まだ間に合うから、気をつけてね。いい旅をね!」
「はい!ありがとうございました。」
教えてもらった通りに階段を駆け上がり、上の階にある切符売り場へ向かった。
「これから出る便に乗りたいんですけど」
「ジェットフォイルがですね。お一人様でよろしいですか?」
「はい。」
「お帰りは?」
「片道で結構です。」
「六千百三十円になります。」
お金を支払って、切符を手にすると、私は未知の島へ行くという気持ちがぐんと高まった。
「そこの通路を真っ直ぐ進んで、ジェットフォイル乗り場と書いてある通路に進んでください。あと十五分で出向します。」
「はい。」
切符と荷物を持ち、教えてもらった通りの乗り場から船に乗り込むことができた。思っていたよりもずっと豪華な船で、座席はまるで飛行機に乗っている様な心地だ。
出校の合図が鳴り、アナウンスが入った。港を出るまではゆっくりな感じがした。
大きな川を下り、海に向かう途中で船体が浮き上がるような感覚がした。そこからは、ジェットフォイルがものすごい速さで航行している。あっという間に海に出て、新潟港はすぐに視界から遠くなってしまった。船の後ろには白波というか、チョークで線を引いたように白い波後が残されているのがとても印象的だ。
ほんの何時間か前は、パジャマ姿でパソコンの前に座り込んでいたのに、今は海の上にいる。
篤志と別れてから時間がゆっくりしか進んでくれなかったのに、今の進みようといったらどうだろう。時間があっという間に過ぎていく。
私は、みどりの窓口で片道切符を買って佐渡に向かうことにした。
篤志のいるこの街から出たい衝動に強く駆られていた。だから、あんなに早く支度して家を出てこられたんだと思う。
私は、昔からそういう質だった。一旦決めたら、突き進むという猪突猛進なところがあって、それがいい結果も悪い結果も生んできた。今回は、いい結果に繋がる様な気がする。だって、今はどん底にいるのだから…。
私は、どうにかして今を替えたかった。こんなことで人生を終わりにしたくなかった。だから、見知らぬ街に行って、自分を取り戻す事を決意した。
新幹線乗り場のホームに降りると、家に居た時とは全く異なる気持ちになってきていた。一人旅自体が初めてだったし、大勢の人が行き来して活気のような熱を感じる。家にこもっている間は、感じたことない温度だった。
ベンチに座り、切符を見ながら、「本当に行くんだな」という気持ちがふつふつと湧き上がってきた。ネットでは美味しそうな料理と、きれいな海、観光名所などが紹介されていた。今から向かって、泊まるところがあるかどうかも分からない。でも、今行かなきゃ絶対に後悔する。振り返らないことを決めたのだ。
そう思っていたところに、新潟行きの『MAXとき』が入ってきた。
数名の乗客に続いて乗り込むと、中はまばらだった。まぁ、この時間帯なら混雑するとは思っていなかった。なにせ、平日で午後だ。
私は、チケットにある番号を確認しながら、座席を探した。
窓側の席にしたので、新潟駅に着くまでの間、景色を見ることができる。そうすれば、余計なことを考えなくても済む。篤志のことを思い出したら、きっとまた泣いてしまうだろう。それに、自分を追い込んでしまう事を防ぎたかった。
席を見つけると、荷物を上にあげ、手荷物だけ持って席に座った。
席に座って外を見ていたら、篤志のことがよぎりそうになった。その時、『MAXとき』が動き出した。そのおかげで、思い出は消えてくれた。
走っていた新幹線が地上に出てしばらく経つと、車内販売員の姿が見えた。その途端、お腹が鳴った。そう言えば、ここ数日はお水だけしかお腹に入れていなかった。いいタイミングだった。私は、販売員さんを呼び止めた。
「鶏めし弁当と…、あとお茶ください。」
「はい、ありがとうございます。」
お弁当とお茶を受け取り、代金を支払うと、販売員さんは一礼してまたカートを押し始めた。私はあまりの空腹にすぐに食べ始めた。ガツガツ食べてしまうのがもったいないほどの美味しさだった。
そんなにも、私は飢えていたんだということを実感した。美味しい物好きの私が、こんなにも飢えた状態にあった事を意識出来ないくらいに、体も心もショックを受けていたのだ。
涙が出そうになったが、ぐっとこらえた。私はこんなことで負けちゃいけない。そう思って一生懸命にお弁当を食べた。
新幹線『MAXとき』は、驚くほど早く着いた。お弁当を食べ終わり、お茶を飲みながらぼーっとしているうちに、新潟駅に着くアナウンスが入った。慌てて上に載せた旅行カバンを下ろし、席を離れて出口へと急いだ。
新潟駅に降り立ち、足早に改札に向かった。駅を一歩出ると、澄み切った空が広がっているせいか、夕方なのに明るかった。今日のうちに何とか佐渡ヶ島に着きたいと思い、近くにいた駅員さんにどこへ行けばいいか尋ねることにした。
「すみません。佐渡ヶ島に渡りたいんですが、どこへ行ったらいいでしょうか?」
「ここの先が、タクシー乗り場だから、そこで佐渡汽船乗り場まで頼むといいですよ。」
「ありがとうございます。」
そう言って、お辞儀をした私は、何故か早足で出口に向かい、タクシーに乗り込んだ。
「佐渡ヶ島に行きたいんですけど」
「はい、汽船乗り場だね。お客さん佐渡は初めて?」
「はい。」
「じゃあ、次出港の船に乗れるように急ぐから、シートベルト締めてね。」
「はい。」
運転手さんは安全運転と言いながらもタクシーをとばしてくれたので、あっという間に、汽船乗り場まで乗り付けた。
「ここの階段を上れば、切符売り場だからね。まだ間に合うから、気をつけてね。いい旅をね!」
「はい!ありがとうございました。」
教えてもらった通りに階段を駆け上がり、上の階にある切符売り場へ向かった。
「これから出る便に乗りたいんですけど」
「ジェットフォイルがですね。お一人様でよろしいですか?」
「はい。」
「お帰りは?」
「片道で結構です。」
「六千百三十円になります。」
お金を支払って、切符を手にすると、私は未知の島へ行くという気持ちがぐんと高まった。
「そこの通路を真っ直ぐ進んで、ジェットフォイル乗り場と書いてある通路に進んでください。あと十五分で出向します。」
「はい。」
切符と荷物を持ち、教えてもらった通りの乗り場から船に乗り込むことができた。思っていたよりもずっと豪華な船で、座席はまるで飛行機に乗っている様な心地だ。
出校の合図が鳴り、アナウンスが入った。港を出るまではゆっくりな感じがした。
大きな川を下り、海に向かう途中で船体が浮き上がるような感覚がした。そこからは、ジェットフォイルがものすごい速さで航行している。あっという間に海に出て、新潟港はすぐに視界から遠くなってしまった。船の後ろには白波というか、チョークで線を引いたように白い波後が残されているのがとても印象的だ。
ほんの何時間か前は、パジャマ姿でパソコンの前に座り込んでいたのに、今は海の上にいる。
篤志と別れてから時間がゆっくりしか進んでくれなかったのに、今の進みようといったらどうだろう。時間があっという間に過ぎていく。