君の姿、午後5時半【短編】
世間では華の女子高校生なんて云われているのに、女の子らしい経験が皆無な自分が何だか虚しくなってきた。


頭を振って虚しさを無理矢理何処かへと飛ばせば、外へ連れて行かれる宮野くんの姿を見遣る。


すると、「あっ」と今まで散々友達に対して叫んでいた宮野くんがいきなりあたしの方を見つめて口を開く。



「さっきこいつに邪魔されて云えなかったんだけど、俺が今まで天野さんにした告白とか交わされてたのは知ってる。でもまじで好きっす!俺受験生だし天野さんの事は名字とか天野さんの行ってる学校とかしか知らねえけど…好きなんです!天野さんの通ってる高校に行きたくて俺毎日塾行って…、……あれ?自分で何云ってるか分かんなくなってきた…」

「……ぇ、な、…え?」



好意を伝えてきた半年前のように店内に響き渡る声で宮野くんに叫ばれ、私は思わず、かあ、と頬を紅く染めてしまった。


現在、店内にはお客様は一人も居ない。


だからだろうか、店の奥からバイト仲間数人の賑やかな笑い声と、この状況への冷やかしの発言が多々聞こえてくる。


今日は店長も休みで居ない上に、お客様が誰一人として居ない事を知っているから私と彼の様子を見物して楽しんでいるのだろう。
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