嘘ごと、愛して。


お昼休みはいつも一人だ。


妹と仲の良かった友人とはクラス替えで離れ離れになってしまったようで、関わる機会が少ない。

仲の良い友人にボロが出てしまっても困るから、助かってるんだけど。



体育館裏でパンをかじりながら好きな音楽を聴く。入れ代わってからちょうど一週間、この時間だけが学校で唯一、村山志真に戻れる瞬間だ。

イヤホンから流れるバラードに気持ちを落ち着かせる。



「ねぇ、正義。今日カラオケ行かない?」


「行こうよ!セイギ〜」


姿は見えないが、女子の甲高い声が聞こえた。


「セイギがいないとつまんないよ〜」


教室でもよく見る光景。
最初は白い目で見ていたが、もう慣れた。


「ねぇ、セイギ〜」

「うーん、ごめん」

「「なんで???」」

「今日は先約があるんだよー」


断り文句にも甘い声を出し、語尾にハートをつけているかのような気持ち悪さだ。
妹は、この男に騙されていたのではないか。


< 10 / 185 >

この作品をシェア

pagetop