嘘ごと、愛して。

「そういうわけで、どーぞ」

残りの700円ではとれずに、正義はお財布からお金を何回か取り出していた。
けれど、もういいよ。
なんとなくそう言えなかった。


やっととれたクマの女の子は耳にりぼんをつけて、男の子はネクタイをしていた。
そして正義は男の子の方を私に差し出してきた。


「俺だと思って大事にして」

「ありがとう」

「さ、そろそろ帰ろうか」

「随分、遊んじゃったね」

「たまには良いだろう。楽しかったな」

「うん、楽しかったね」

すっかり放課後になっていた。

この時間は真凛だからこそ、手に入れられた大切なひととき。

村山志真に戻った時には、一切なくなってしまうんだ。


「送ってく」

「ううん、大丈夫」

「遠慮すんなよ」

「本当に大丈夫だよ」

「分かったよ。またね」

「またね」


"またね"その言葉が重い。

明日、学校に行くかは分からない。

今夜きちんと真凛と話して、もし今後、学校に行く必要がないようだったら、

ーー今日で逢うのはもう最後だ。


本当にサヨナラなんだ。


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