嘘ごと、愛して。
「真凛が好きなのは裕貴?晴人さん?それとも、…正義?」
聞く覚悟ならできている。
「…お姉ちゃんはなにも分かってない」
「だから理解しようと、聞いてる」
「…なにも分かってない」
はらはらと真凛の大きな瞳から大粒の涙が溢れる。
「後悔しているのなら、ちゃんと謝ろう。過ちをなかったことになんて、できないんだよ」
冷たい手を握る。
私にできることなんて、数少ない。
それでも真凛を元のレールに戻してあげたい。
「百瀬さんだって、真凛のこと許してくれるよ」
「お姉ちゃんは!」
真凛が泣きながら声を荒げる。
「……分かってないよ」
最後はほとんど聞こえなかった。
「もう学校に行かなくて良いよ。お姉ちゃんはお姉ちゃんの人生を生きて。私の代わりなんかやらないで」
「真凛…」
「もう、私は良いから……私の分まで、幸せになって」
ギュッと私の手を握った真凛は、辛そうに微笑んだ。
痛々しい笑顔に、胸が締め付けられる。
部屋に戻って行く彼女を止めることが、できなかった。