嘘ごと、愛して。
それは違和感では終わらなかった。
「正義、宿題見せて」
「は?」
「昨日寝落ちしちゃって、やれなかったの」
「…俺がやってるとでも?」
「……なんかアンタ、変だよ」
「変?意味分かんない」
面倒臭そうに欠伸をした正義は、私を避けようとしている。
昨日のことが気に障ったのだろうか。
なにも語らず泣いた私に、嫌気がさしたのだろうか。
「正義、宿題なら、私が見せてあげる」
「お、麗奈(れな)。助かるよ」
「代わりに、今日カラオケ行かない?」
「いーよ」
麗奈というクラスメートが私を見て口の端を上げて笑った。
勝ち誇ったような笑み。
「それじゃぁ放課後ね」
「はいはい」
ペンを走らす手を止めず、正義は頷いた。
軽いスキップをして自分の席に戻る麗奈さんに、クラスの女子が群がる。
麗奈!私も混ぜて!
私も!お願い!
聞きたくない。
想像したくない。
そう思うことはわがままだと知っているから、なにも言えない。