嘘ごと、愛して。
〜side 晴人〜
生徒会室の扉を静かに開ける。
「久しぶりだね、峰岸晴人くん」
「…やぁ、久しぶり」
こちらを向いた生徒会長はカーテンを開けて窓際から校庭を見ていた。
放課後はサッカー部が練習をしていて、掛け声の他に黄色い歓声が聞こえた。
ああ、今日は正義が助っ人に入ってるんだな。
「僕は何か用かな?悪いけど、忙しいんだ」
「単刀直入に言うけど。3/21、うちのお店に真凛と来たよね?」
昨晩、学校の至るところで撮った写真を集めて隅から隅まで兄に見てもらい、時間がかかることを覚悟して待機していたけれど。兄は意外にもすぐにお目当ての人物を見つけた。
「…行ったよ」
裕貴の表情を確認したが、彼は晴人が此処に来た時から予想していたのだろう。眉一つ動かなかった。
「どうしてあの日、ずぶ濡れで真凛は帰宅することになった?あの日から、真凛は引きこもりになった」
「……あの日、僕は真凛と食事した後すぐに別れた。僕には塾があったからーーもしあの日、真凛を自宅まで送り届けていたら、こんなことにならなかった…」
「それは本当か?あの日、真凛とどんな話をした?」
「…どんな?他愛のない話だよ」
「…だから、その内容を!」
「一緒に居た時は異変は感じなかった!僕は!真凛とずっとずっと一緒に居た。物心つく前からずっと!君よりも長く一緒に居た僕が、気付かなかったことを、君が気付けたとでも??」
物凄い剣幕で言い返して来た男の目に、涙が浮かんでいた。